第6話、物語が一気に核心へ踏み込んできた。今回は「兆(きざし)」という人物の輪郭がついに明かされ始め、視聴者の理解が間に合わないほど怒涛の伏線回収ラッシュ。タイトル通り“ちょっとだけ”では済まない、完全に超能力SFドラマの本気モードが訪れた回だった。
■兆は誰と話している?
冒頭、兆が「未確認因子」のチェックをしているシーン。
ここ、以前から謎だったポイントがそのまま続いている。“誰と話しているのか?” それとも自分への“ボイスメモ”なのか? 視聴者としてはずっと違和感として残っていたが、今回のラストでその意味が一気につながり、鳥肌ものだった。
市松(兆は「のちの市松博士」と表現)、紫苑(静電気系)、クリュウ(音波系)、そして“白い男”。この4人の存在がまた徐々に別ラインで動き始めており、今はまだ点が線にならない不気味さを残す。
■四季、まさかのEカプセル摂取
四季がEカプセルを飲んでしまうという衝撃的展開。
兆の「当然だ」という意味深なセリフ。
そこに続く“兆の不自然なカット”。
視聴者はすでに気づき始めている——兆は何かを隠している。
そして四季の問い。
「私、兆さんに会ったことありますか?」
「いえ、初めてです」
——この瞬間、空気が変わった。
だがその直後、兆がひとり呟く。
「私のことを覚えていなかった」
四季の“夢”に出てきたシーン。あれは夢でも想像でもなく、夫である兆が事故で死んだ記憶だったのか。
ではなぜ四季は覚えていないのか?
兆が意図的に記憶を改ざんしたのか?
しかし四季は今、その封印を破り、記憶がフラッシュバックし始めている。
■文太、市松と邂逅。ボスは“アイ”
文太が市松と直接話し、ここで一気に情報が開示される。
文太の能力で判明した衝撃の事実。
「ボスはアイ」
「兆はビッグデータを使い、ジャンクションを改変し、未来を変えている」
そして告げられる未来。
「1000万人が死ぬ。それは兆が原因」
兆が未来を改ざんした結果、1000万人が死ぬ——。
その通信を“アイ”がハッキングしていた、と市松は説明する。
「あなたらのところのボス」と市松が言う言葉も興味深い。
同じ組織ではないのか、それとも途中で組織が分岐したのか?
ここにも“未来”と“現在”が絡む大きなズレがありそうだ。
■兆の“スカウト”。紫苑をこちら側へ?
兆は桜介に対し、
「紫苑はだまされている。こちら側に寝返らせよう」
と提案する。
兆の行動は善なのか悪なのか、視聴者が判断できないギリギリを攻める面白さがある。
文太は「1000万人」と「1万人」どちらの未来を選ぶかという極端な二択を突きつけられる。
その悩みを3人(四季、桜介、クリュウ)に相談し、
彼らは市松たちと直接会って話すという道を選ぶ。
ここも、超能力ものとは思えないほど“対話”を重んじる本作ならでは。
白い男は仲間ではない、と市松たちから明言される点も重要な新情報。
■ミッションの真相
クリュウの同級生・柳が受けた「バイト」の過去が語られる。
雇われてやらされたのは——
Eカプセルの製造。
しかし柳はその後、死亡。他にも仲間が殺された。
Eカプセルはただの能力薬ではなく、人の命を奪うほどの重要な薬。
この伏線が後々、能力者の存在意義まで揺さぶる重要なポイントになりそうだ。
■兆は半蔵とカラスを操る
兆は半蔵(相棒AI? もしくは未来のサポート個体?)とカラスを使い、敵の正体を探っていく。
今回のターゲットはクジョウ。
クジョウが何者なのか、組織との関係とは何か、ここが次回以降のキーになりそうだ。
■四季の記憶がついに回復へ
四季がフラッシュバックする中で、「文人(ふみと)」と書いたIDのシーンを思い出す。
これが兆の本名。
「文人(ふみと)」「文太(ぶんた)」四季は“文ちゃん”が
文太なのか文人なのか区別できなくなっている。
この混乱は、改ざんされた記憶の綻びが表面化してきている証拠。
■タイムパラドックスの矛盾は?
文太が兆に触れようとするが——
すり抜けた。
「私の実体は未来にある」
兆のいる場所は 2055年。
兆は“現在にいるようで、実体は未来に存在している存在”なのだ。タイムマシンは発明されなかったが、データ通信は可能になったという。
アイの正体が明かされる。ドラマ全体の布石になり得る情報。
市松に2055年の市松博士からのメッセージが届く。
だから I(アイ) ——
すべては未来から送られる通信だった。
ここでタイムパラドックスの矛盾が気になってきました。いくつある矛盾の中でも今回に関係する説は大まかに分けて2つ。
①どう過去を変えても未来は変わらない
②過去を改変した時点で分岐点が生まれパラレルワールドが生まれる
このドラマはジャンクション(分岐点)という表現を使用しているため、②の説を採用しているはと思ったが、「1万人が死ぬことを防ぐ」明確に未来を変えようとしている。あくまで、タイムラインは1つで枝分かれはするが、並行世界は生まれず、未来が変わっていく。「バックトゥーザフューチャー」方式を採用していることになる。これは作者の決めの問題ですね。
第6話、圧倒的なインフォメーション量とドラマ的感情の爆発。前回も衝撃連続だったがまだ6話でこのテンション。野木脚本の疾走感は凄まじい。
そんな中に四季と兆の“夫婦でありながら思い出せない関係”は、SFを通した純度の高いヒューマンドラマに到達していて見応えがあった。
■残っている謎
・2055年の市松は自分にメッセージを送っているのに、兆は立体映像のみ。ということは兆本人はこの世にいないことが濃厚。そうなると2055年の兆はなぜ立体映像を送れるのか?
・文人と四季が夫婦だとして、文人=兆が死んだ事実は変わらないのか
・白い男(麿赤兒)は何者でどこの組織の人間?
・2055年に何か起きたのか?
・Eカプセルの製造を思いついたのはいつ?誰?
・未来を改変するなら、なぜ、ちょっとだけESP能力が必要なのか?
・桜介の能力の進化(覚醒)咲かすを通り越して、花を枯らせる能力。ワンピースの悪魔の実のように能力は覚醒する?
次回、物語は未来と現在、記憶と能力、そして“死ぬはずの人間”を巡る因果が一気に交錯するはず。
いよいよ『ちょっとだけエスパー』の本質が見えてきた回だった。
