小國以載という稀有なボクサー〜諦めない男

ボクシング

10月1日 「TREASURE BOXING 10」のメインで元IBF世界スーパーバンタム級王者の小國以載がタッタナー・ルワンポン(タイ)とのスーパーバンタム級8回戦が行われ、滅多に拝めないダブルノックダウン、結果は小國が3-0判定勝ち!37歳の元王者はどこへ向かう?

引退宣言と強者の世界ランカーと対戦 

小國以載といえば、以前引退宣言をしたにも関わらず、たしか2度復活したボクサー。本来のスタイルは足を使ったアウトボクシングとテクニック。世界奪取した試合での強烈ボディは計算通りだったはず。ところが、最近の小國は激闘型。37歳、どんな優秀なボクサーでも反射神経は衰えているはず。つまり、多少は目が衰えてパンチの軌道を追えなくなっているはず。筋力を鍛えてスピードやパワーは補えても、パンチを避ける能力はそうもいかないはず。アウトボクサーには酷な現実。

23年カシメロ戦では、突進して振り回してくるカシメロに付き合うしかない展開。それでも要所で相手の打ち終わりを狙ったパンチをヒットさせていた。最後はパワー負けでKO。24年ンギーチュンバ戦、1Rから積極的に打ち合いにいく。パンチ力のあるKO率の高いンギーチュンバになぜ!?結果は1R KO負け。試合後。小國本人「右肩負傷で右腕が上がらないくらい」長期戦は不可能と考え、短期決戦で挑む決断したという。さらに小國というボクサーの「ただでは負けない!」という気概を十分に感じた。そして翌年復活。相手はパーフェクトレコードのWBO-AP王者の村田昴。どう考えてもスピードもパワーも劣る。小國は高いボクシングIQを駆使し、王者に挑んだが6Rで散ったが見せ場は随所に作っていた。ただ、あまり事情を知らないライトファンからすると、衰え始めた37歳の元王者が新鋭のアジア王者、それもパーフェクトレコード更新中の相手に勝てるわけないじゃん!なんでこんな無理なマッチメイクするんだろうと思ったのを覚えている。引退への花道?とも感じたのは事実。マッチメイクをしたTREASURE BOXING代表の伊藤雅雪氏は、「ランキングが上位でもつまらない相手とやっても意味がない」と常々言っているとのこと。

崖っぷちの再起戦

それで今回のタッタナー・ルワンポン戦。WBC世界同級14位で、井上尚弥と対戦相手として上がっていたサム・グッドマンと対戦し、負けはしたが判定までも連れこんでいる強豪。再起戦、しかもここで負ければいよいよ後がない。どう考えても7:3で不利だよね。

2R、相手の左フックを被弾。同時に小國も左フック、タッタナーも右手をついてダブルノックダウン。ダメージは小國の方が深刻。足元がぐらつく状態。万事休すと思ったが、タッタナーが猛攻を仕掛けてこない。そればかりか小國のパンチは的確にヒット。なんとかこのラウンドを凌いだ。3回以降は、小國も回復しうまく上下に打ち分け、特にボディを何発か効かせていた。タッタナー明らかに嫌がるそぶり、右ガードが下がっていた。その後、タッタナーは失速。ジャッジは3人全員小國以載を支持。見事、劣勢を覆して再起勝利!お見事でした。

小國本人は伊藤雅雪代表との対談で「サム・グッドマンの試合ではボディは打たれていなかった、上は何発打っても倒れない」ボディに勝機を見い出していたことがわかる。2Rのダブルノックダウンは「足にきていた」。それにしても、ダブルノックダウンを生で初めて見ました。常に爪痕は残しますね。さすがです。結果論で言えば、村田昴戦を思い出す。タッタナーは村田に比べればスピード、パワー、スタミナ、全て一段落ちる。それほど脅威に感じることなく冷静に作戦遂行できたことに繋がったと思いたいです。やっぱりボディ打ち上手いです。

世界タイトルだけがボクシングではない

37歳にして世界ランカーに激勝。スポーツ紙の記事は世界へ再挑戦!とか書くけれど、小國はスーパーバンタム専属。そこにはモンスター井上尚弥がいて、中谷潤人もいる。西田凌佑、中嶋一輝、村田昴、井上尚弥戦で評価を上げたラモン・カルデナス、タパレス、ピカソ、ネリと名前を上げたらきりがない。勝てないとは言いませんが、そこのベルト狙いに行っても正直厳しいとしか思えない。あと何戦できるのか、最終ゴールをどこに置くのか本人しか分かりません。でも試合は熱い、何か見せてくれるボクサーであることは間違いなし。しかもインタビューが面白い。「(過去に負けた)ンギーチュンバとやりたいです!」本気か!?リーチ差が凄いんですけど。ゴールはアジアタイトルを獲りに行く!でよくないですか?マッチメイカーが考えることなんでわかりませんが、すぐに世界戦とかないと思いますので、ボクサー小國のドラマをもう少し楽しませてもらえそうです。日本ボクシング界でも稀有な存在、小國以載これからも目が離せません。

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